※この記事は、はてなブログのベータテスト用に自分のはてなダイアリーの下記記事を転載したものです。
http://d.hatena.ne.jp/mame-tanuki+tiraura/20111207/Cult_YamamotoNaoki
ちょっと前、先月11月25日の『朝日新聞』朝刊に16年前のオウム真理教事件を振り返る特集記事が掲載されていた。その特集の中で、漫画家の山本直樹氏が一文を書いている。これがなかなか印象深い。
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■「閉鎖環境で言葉だけが暴走する」
山本直樹氏は『ビリーバーズ』以外にも『ありがとう』など、ちょくちょく作品の中でカルト教団を描いている。自分もけっこう好きな漫画家。山本直樹氏は、人々や世界を救うこと掲げていた宗教団体が社会に対して恐るべき破壊活動を起こすに至った謎について、やはり社会を良くすることを標榜しながら暴力に走った連合赤軍と絡めて、次のように語っている。
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2006年から連合赤軍を題材とする漫画「レッド」を描き続けて見えてきたのは、「閉鎖環境で、言葉だけが暴走する」という構造です。
オウムも連合赤軍も「救済」とか「革命」とか大きな言葉を多用する一方で、やっていることは意外に小さくて笑える面もある。でも、外部との接触を失ううちに、言葉と現実とのギャップに誰も突っ込めなくなる。【中略】
実は「人々が外部と向き合う視点を失い、異常な結果をもたらす」というのは、家庭内暴力や教室でのいじめ、カンボジアの虐殺や戦争末期の日本軍、最近ではオリンパスなど、そこら中で起きています。集団は本質的に自閉しがちだからこそ、生き延びるために外部と交流しなければならない。オリンパスも、「外国人社長」という一種の外部からの告発で、結果的にはよい方向に向かいました。
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山本直樹「【耕論 オウムという時代】閉鎖環境、言葉だけが暴走」『朝日新聞』2011年11月25日、朝刊15面
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自分たちの狭い集団の中だけで通じる言葉で世界を語る事で、現実の世界を自分たちの頭の中で描いた仮想の世界で上書きする。そうして生まれた仮想の世界の中だけで通じる独り善がりな正義を、無理やり現実の世界に押し付けようとする。そこで生じるギャップを力任せに解決しようとする。こうして、その集団外にとっては悪に他ならない行為が、善かれと信じて実行される。定期的に異なる視野を持つ外部の人間を集団の中に入れなければ、自分たちの信じる正義を相対化する視座を得ることは出来ない、というわけだ。
■ITベンチャー企業もカルト的な独善に走り易い?
考えてみると、カルト集団が暴走に至るこの構図は、ひょっとしたらITベンチャー企業にも適用できそうな気がする。
ITベンチャー企業も、特にインターネット方面は、自分たちの狭い業界の中で生み出された言葉や概念を使い世界を語ろうとする。そうして語られる世界は現実世界とは少なからず異なる。
例えば、インターネット上で語られる「ソーシャル」と実際の「社会」。オンライン上の仮想世界での「ともだち」とオフラインの現実世界での「ともだち」。そこにはギャップがある。しかしそういうギャップを認識する感覚が薄れ、麻痺した時、そこで語られる「世界を変える」「世界をより良くする」という正義は、カルト教団や革命運動団体がしばしば語るような独り善がりな正義と似通ったモノになるんじゃないだろうか。
ベンチャー企業から今や超巨大企業へと成長したGoogleの掲げる有名な信条として、「邪悪になるな("Don't be evil")」というのがある。これに対して自分が時々感じる恐ろしさの正体というものも、これかもしれない。つまり、Googleが信じる善悪とは、Google以外が信じる善悪と大きくズレることはないのだろうか?Googleが独善的な正義を掲げて暴走することはないのか?
その点、京都に本社を置くカルト的ネットサービス企業の場合は、たとえ突如として独善的な正義を振りかざして暴れ出したとしても、さほど被害は無いかもしれない。ユーザーは同業他社のサービスにさっさと引っ越せば良いのだから。
【関連ツイート】
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mametanuki まめ狸 |
現実世界と違い、ネットサービスは非民主的な独裁が許されると思うんだよね。ユーザーは簡単に引っ越せるのだから>「ビジョンは、ある種の押しつけ」 / “考えごと - naoyaの日記” http://t.co/fxuNynHb (2011/12/07 00:19:26) |
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